ハリネズミと旅行|温度管理で決める留守番と預け先

ハリネズミは鳴き声も小さく、散歩もいらないため、「1〜2日くらいなら置いて出かけても平気だろう」と考える飼い主さんは多いかもしれません。

ところが実際には、ハリネズミは温度の変化にとても弱く、寒すぎても暑すぎても体の働きが落ちてしまう動物です。

旅行のあいだに部屋の温度が下がったり上がったりすると、飼い主が帰るまで誰にも気づかれないまま、ハリネズミの体に負担がかかり続けることになります。

一方で、昼は眠り夜に活動するという暮らし方も、預け先を選んだり連れて行く方法を考えたりするときに、見落とせない判断材料になります。

この記事では、獣医学の資料や航空会社・鉄道会社のルールをもとに、ハリネズミを旅行中にどう過ごさせるかを「温度を保てるかどうか」という軸で整理していきます。

留守番の準備、預け先の選び方、連れて行くときの移動と宿、季節ごとに変わる注意点、そして帰宅後に確かめたいことまで順番にまとめました。

温度の見通しさえ立てば、ハリネズミがいても旅行の計画は落ち着いて組み立てられます。

目次

ハリネズミが旅行を苦手とする理由

寝袋のようなポーチから顔を出すハリネズミ

旅行中の過ごし方を決める前に、ハリネズミがどんな点で環境の変化に弱いのかを知っておくと、準備の優先順位がはっきりします。

ここでは、旅行の計画に直接かかわる4つの性質を、獣医学の資料をもとに見ていきます。

最適な温度は24〜29℃と幅が狭い

ペットとして飼われているハリネズミの多くは、アフリカ中部から東部の乾燥した開けた土地に暮らすヨツユビハリネズミ(アフリカハリネズミとも呼ばれる種類)です。

獣医師向けの手引きであるMerck Veterinary Manualには、環境温度は22〜32℃の範囲に保ち、24〜29℃が最適と書かれています。

人が過ごしやすいと感じる温度とおおむね重なるように見えますが、冬の夜間にエアコンを切った部屋や、夏の日中に閉め切った部屋は、この範囲を簡単に外れてしまいます。

飼育情報サイトによって適温の書き方は24〜28℃、22〜26℃などとばらつきがあるため、迷ったときは獣医学の資料が示す24〜29℃を基準にすると判断しやすくなります。

寒さや暑さで冬眠に似た状態になる

同じマニュアルには、ハリネズミは寒すぎても暑すぎても休眠に似た状態(torpid state)になることがあり、それは健康によくないと考えられているとも書かれています。

ここでいう休眠に似た状態とは、体温や呼吸が落ちて、呼びかけにもほとんど反応しなくなる状態のことです。

野生の動物が準備を整えて入る冬眠とは違い、飼育下で急に起こるこの状態は体に大きな負担をかけます。

ブリーダーの解説でも、「休止状態や仮死状態と言うべきもの」と表現されています(Hari Navi「夏眠・冬眠対策」)。

旅行中は飼い主がその変化に気づけないため、温度が外れない仕組みを先に用意しておくことが何より大切になります。

昼に眠り夜に動く夜行性

ハリネズミは単独で暮らす夜行性の動物で、昼間は隠れ家の中で眠り、暗くなってから餌を食べたり動き回ったりします(Merck Veterinary Manual)。

人の旅行は昼に移動して夜に休む流れになるため、連れて行くと移動の時間がちょうどハリネズミの睡眠時間に重なります。

また、夜に回し車を回したり、ケージの中を歩き回ったりする音は、旅先の宿では思った以上に響くことがあります。

預け先でも、日中に明るい場所や人の出入りが多い場所にケージが置かれると、本来眠っている時間に落ち着いて休めなくなることがあります。

預け先や来てもらう人を選ぶときも、夜に活動するという性質を理解しているかどうかが、お世話の質を左右するポイントになります。

環境の変化に敏感で丸まって身を守る

ハリネズミは危険を感じると、背中の皮膚の筋肉を縮めて体を丸め、針を立てた球のような姿になって身を守ります。

慣れない音やにおい、知らない人の手が近づくといった刺激が続くと、この姿勢のまま動かなくなったり、餌を食べる量が落ちたりすることがあります。

隠れ場所を用意することは飼育に欠かせない条件だと前出のマニュアルにも書かれており、隠れる場所がない環境は、それだけで大きなストレスになると考えてください。

丸まっているときに無理に体を開かせようとすると、かえって緊張が長引くため、落ち着いて自分から顔を出すまで待つことが基本です。

旅行でケージの場所やにおいが変わるときは、いつもの隠れ家や寝床をそのまま持って行くなど、変化を小さくする工夫が求められます。

旅行中のハリネズミはどう過ごさせる?4つの選択肢

器から餌を食べるハリネズミ

旅行中のハリネズミの過ごし方は、自宅で留守番させる、施設に預ける、自宅に来てもらう、一緒に連れて行く、の4つに分かれます。

どれを選ぶかは日数だけで決めるのではなく、旅行中も温度を24〜29℃の範囲に保てるかどうかを基準に考えるのがハリネズミの場合のポイントです。

選択肢温度の保ちやすさ主な注意点
自宅で留守番エアコンとサーモスタットがあれば保ちやすい停電・機器の故障に誰も気づけない
施設に預ける施設の空調による移動と環境の変化、ハリネズミに慣れているか
自宅に来てもらう自宅の空調をそのまま使える訪問の時間帯、ハリネズミの扱いに慣れているか
連れて行く移動中と宿で保つのが難しい睡眠時間の移動、宿の空調、夜の音

2017年にTwitter(現X)で行われた飼い主へのアンケートを紹介しているはりちゅうどっとこむの記事では、2泊以上の旅行で「ペットホテル・知り合いに預ける」を選んだ人が71%にのぼりました。

「ご飯を多めに入れてお留守番」は15%で、「連れて行く」と「特に何もしない」は残りをほぼ同じ票数で分け合う結果でした。

自宅での留守番が成り立つ条件

1泊程度の旅行なら、自宅で留守番させる飼い主さんも少なくありません。

ただし留守番が成り立つのは、次の2つの条件を満たしているときに限られます。

温度を保つ仕組みがあるか

エアコンを入れたまま出かけるだけでなく、冬はペットヒーターとサーモスタットを組み合わせるなど、人がいなくても温度が一定に保たれる仕組みが整っていることが前提です。

ケージの中に温湿度計を置き、出発の前日から設定を変えずに様子を見て、夜間や早朝も24〜29℃に収まっているかを確かめておくと、当日の不安が減ります。

停電や機器の故障に備えられるか

どれだけ設定を整えても、停電やブレーカーが落ちれば空調は止まり、その瞬間から部屋の温度は外気に近づいていきます。

専門店の案内でも、台風や大雪で停電が想定される時期の留守番は避けるよう注意されています(はりねずみんみん共和国)。

出発前に天気予報を確認し、荒れた天気が見込まれる場合は預ける方法に切り替えることも考えておきましょう。

預ける先の種類と特徴

預け先には、ハリネズミを扱うペットショップ、動物病院の預かり、ペットホテル、ブリーダー、知人などがあります。

どこに預ける場合も、ハリネズミを預かった経験があるか、ケージの置き場所の温度を何度に保っているかを事前に聞いておくことが大切です。

夜間はスタッフが不在になる施設もあるため、夜のあいだの温度をどのように管理しているかも聞いておくと、冬の預け先を選ぶときの判断材料になります。

犬や猫と同じ部屋で預かる施設では、鳴き声やにおいで落ち着かなくなる子もいるため、預かる部屋の環境も確認しておくと判断しやすくなります。

初めて利用する預け先なら、旅行の前に半日ほどの短い預かりを試してもらい、帰ってきたあとに食欲や便の様子が変わらないかを見ておくと、本番の判断材料になります。

預けるときは、いつものフードと床材、隠れ家や寝床を持参し、フードの量や与える時間をメモにして渡しておくと、普段に近い環境で過ごしてもらいやすくなります。

施設と訪問のどちらが自分の旅行に合うかは、ペットシッターとペットホテルどっち?違いと選び方を解説で比べています。

自宅に来てもらう方法

ペットシッターや家族に自宅へ来てもらう方法なら、ハリネズミは移動せずに、いつものケージといつもの温度のまま過ごせます。

環境の変化に敏感なハリネズミにとって、ケージを動かさずに済むことは大きな利点です。

一方で、訪問のあいだの時間は誰もいないため、空調が止まったときにすぐ気づけるわけではない点は、留守番と共通しています。

連れて行くのは最後の選択肢と考える

ハリネズミを旅行に連れて行くことはできますが、移動中と宿の両方で温度を保つ必要があり、しかも移動の時間が睡眠の時間と重なります。

ハリネズミカフェのブログでも、環境のストレスを考えるとあまりおすすめできず、どうしてもという場合は温度変化に気をつけて車で移動するよう書かれています(HAGU CAFE)。

連れて行く場合は、旅程の中でハリネズミが静かに眠れる時間をどう確保するかも考えておきたいところです。

観光で宿を空ける時間が長いと、部屋の空調が保たれているかを確かめられない時間も、そのぶん長くなります。

帰省先で長く過ごす場合など、ほかの方法がとれないときの選択肢と考えておくとよいでしょう。

留守番させるときの準備

1泊程度の留守番を選ぶ場合は、出発の数日前から準備を始めると、設定の不具合に気づく時間をとれます。

ここでは温度、食事、水、ケージの中、見守りの5つに分けて準備の中身を整理します。

エアコンとサーモスタットで温度を保つ

留守番の準備でもっとも優先したいのが、温度を一定に保つ仕組みづくりです。

夏も冬もエアコンを基本にし、冬はそれに加えて小動物用のヒーターを使い、ヒーターには設定温度を超えると電源が切れるサーモスタットをつないでおくと、温度の上がりすぎを防げます。

エアコンの風がケージに直接当たると、その部分だけ冷えたり乾燥したりするため、風向きを変えるか、ケージの置き場所をずらしておきましょう。

窓際は昼と夜で温度差が大きく、直射日光も入りやすいので、留守番のあいだは窓から離れた場所にケージを移しておくのが無難です。

エアコンのタイマーが入ったままになっていないか、節電のための自動停止機能が働かないかも、出発前に設定画面で確かめておいてください。

フードはドライタイプを多めに用意する

留守中のフードは、傷みにくいドライタイプを基本にします。

ふやかしたフードや生の虫は、時間がたつと傷みやすく、とくに夏場は衛生面の心配が大きくなります。

普段からふやかしたフードを与えている場合は、旅行が決まった段階で早めに、少しずつドライのまま食べる練習をしておくと、当日に食べないという事態を防げます。

フードは1か所にまとめず、器を2か所に分けて置くと、ひっくり返したり近くで排泄したりしたときにも食べられる場所が残ります。

ただし、獣医学の資料では肥満を防ぐために与える量を調整するよう書かれているため、普段の量を大きく超えて入れすぎないように気をつけてください。

水は給水ボトルと皿の2か所で用意する

前出のマニュアルでは、新鮮な水を常に飲めるようにしておくこと、多くのハリネズミは給水ボトルでも皿でもすぐに飲めるようになることが書かれています。

留守番のときは、給水ボトルと皿の両方を用意しておくと、どちらかが使えなくなっても水を切らさずに済みます。

給水ボトルは飲み口が詰まっていないかを指で押して確かめ、皿は床材が入りにくい重さのあるものを選ぶと安定します。

出発の直前に両方とも新しい水に入れ替え、ボトルがきちんと固定されているかをもう一度確認してから家を出ましょう。

回し車と布製品の扱いを決めておく

回し車は、獣医学の資料で強くすすめられている運動の道具ですが、留守番のあいだの扱いは飼い主さんによって考えが分かれます。

専門店の案内では、足を挟むなどの事故に備えて留守中は外しておくのが無難とされており、布製の寝袋やハウスも爪が引っかかるおそれがあると注意されています。

普段から使い慣れていて事故の心配が少ない回し車であれば残す、ほつれのある布製品は外すなど、ケージの中にある物を1つずつ点検して判断するのがおすすめです。

隠れ家は欠かせないため、布製品を外す場合は、木製やプラスチック製の隠れ家を代わりに入れておいてください。

温湿度計と見守りカメラで様子を確かめる

ケージのそばに温湿度計を置いておくと、帰宅したときに留守中の最高温度と最低温度を確かめられます。

スマートフォンで室温を確認できる機器や見守りカメラがあれば、旅行先からでも部屋の状態を知ることができ、異変に気づいたときに近くの家族へ連絡するといった対応がとれます。

ただし、カメラで異変を見つけても、駆けつけられる人がいなければ対応はできないため、合鍵を預けられる人を1人決めておくと、万一のときの動き方が変わってきます。

ハリネズミを連れて行くときの移動と宿

土の上を歩くハリネズミ

帰省などでどうしても連れて行く必要があるときは、移動中と宿泊先の両方で温度を保つ段取りを先に決めておきます。

ハリネズミの場合、移動手段そのものよりも、キャリーの中の温度をどう保つかが準備の中心になります。

キャリーの中の温度を保つ工夫

キャリーは通気口のあるプラスチック製のものを選び、底には普段の床材を敷いて、いつもの隠れ家か寝床を入れておきます。

自分のにおいが付いた寝床があると、揺れや音のある環境でも丸まって眠りやすくなります。

冬の移動では、キャリーの外側を毛布で覆い、使い捨てカイロやペット用の保温材をタオルで包んでキャリーの片側だけに当てておきます。

こうしておくと、暑くなったときにハリネズミが反対側へ移動して調整できます。

保温材を直接体に触れさせると低温やけどのおそれがあるため、熱源はタオル越しに当て、キャリーの中に熱くない場所を残すことを意識してください。

夏は反対に、保冷剤をタオルで包んでキャリーの外側に当てる方法があります。

ただし保冷剤は温まると結露して湿気の原因になるため、長い時間の移動では車のエアコンで温度を保つほうが向いています。

移動のあいだは、キャリーの中に置ける小型の温度計を入れておくと、手で触れただけでは分かりにくい温度の変化を数字で確かめられます。

移動の時間はできるだけ短くなるよう経路を組み、渋滞しやすい時間帯を避けて出発すると、キャリーの中で過ごす時間そのものを減らせます。

車・電車・飛行機のルール

車で移動する場合は、キャリーをシートベルトで固定し、エアコンの吹き出し口の風が直接当たらない位置に置きます。

休憩で車を離れるときにエアコンを止めると、夏は短時間で車内が高温になり、冬は急に冷え込むため、ハリネズミだけを車内に残さないことを原則にしましょう。

電車では、JRが小犬や猫、鳩、またはこれらに類する小動物(猛獣やへびの類を除く)の持ち込みについて条件を定めています。

3辺の合計120cm以内の専用ケースに入れ、ケースと合わせて10kg以内であれば、1個290円の手回り品として持ち込めると定めています(JR東海「手回り品」)。

ハリネズミがこの扱いに当たるか迷う場合は、乗車する駅に事前に問い合わせておくと当日に慌てずに済みます。

飛行機の場合、ANAの国内線の案内ではハリネズミが名前入りで挙げられており、手荷物として預けることはできても、客室に一緒に乗せることはできない扱いです(ANA「ペットをお連れのお客様(国内線)」)。

同じ案内には、貨物室は空調で管理されているものの外気温の影響を受けることがあり、搭載作業は屋外で行うため夏や冬は温度や湿度が大きく変わる場合があると書かれています。

温度の変化に弱いハリネズミにとって負担の大きい移動になるため、飛行機を使う旅行では預ける方法を優先して検討してください。

移動の日は緊張から餌をあまり食べないこともあるため、到着した日の夜に、いつもどおりフードを食べて水を飲んでいるかを確かめておくと、翌日の予定を調整する目安になります。

宿の部屋の温度と夜の過ごし方

宿を選ぶときは、ペット可であることに加えて、ハリネズミを受け入れてもらえるかを電話で確認し、部屋の空調を自分で調整できるかも聞いておきます。

宿によっては外出時にカードキーを抜くと空調が止まる部屋があるため、食事や入浴で部屋を離れるあいだも温度を保てるかどうかが大切な確認ポイントになります。

到着したら、ケージを窓際やエアコンの風が当たる場所から離して設置し、温湿度計を見ながら落ち着くまで様子を見てください。

夜はハリネズミが活動を始める時間なので、回し車を持って行く場合は音が響かないかを確かめ、隣の部屋に配慮して床に厚手のタオルを敷くなどの工夫をしましょう。

季節ごとに変わる旅行の注意点

「注意点」と書かれたブロックと木製の人形(季節ごとに変わる旅行の注意点のイメージ)

ハリネズミの旅行対策は、季節によって気をつける方向が大きく変わります。

同じ1泊の留守番でも、真冬と真夏では準備の中身がまったく違ってくるため、旅行の時期に合わせて見直してください。

冬は冷えによる動きの鈍さに注意する

冬の旅行でもっとも気をつけたいのは、夜から明け方にかけての冷え込みです。

ブリーダーの解説では、ケージの中が20℃を下回る環境で、動きが鈍く体が冷たくなっていれば冬眠に似た状態に入っているおそれがあると説明されています(Hari Navi)。

獣医学の資料が示す許容範囲の下限も22℃なので、冬の留守番では日中よりも夜間の室温に目を向けることが大切です。

エアコンの暖房は温かい空気が天井付近にたまりやすく、床に近い場所に置いたケージのまわりは設定温度より低くなることがあります。

温湿度計はケージと同じ高さに置いて確かめてください。

年末年始の帰省のように家を空ける期間が長くなりやすい時期は、自宅での留守番より、温度を管理できる預け先や、自宅に来てもらう方法を優先して考えるとよいでしょう。

寒冷地への帰省に連れて行く場合は、車の乗り降りや宿の廊下など、ほんの数分の移動でも外気に触れる時間ができるため、キャリーを毛布で覆ったまま運ぶようにしてください。

エアコンとヒーターを組み合わせておくと、どちらか一方が止まったときにも、もう一方で温度の下がりすぎをある程度防げます。

冬の留守番では1つの機器だけに頼らない構成にしておくと心強いでしょう。

夏は暑さと湿気に注意する

夏は暑さそのものに加えて、湿気にも気を配る必要があります。

飼育情報サイトでは湿度は40%までを目安とする説明があり、保冷剤で冷やそうとすると結露によって湿度が上がってしまう点も指摘されています(はりちゅうどっとこむ)。

前出のブリーダーの解説(Hari Navi)では、ケージ内が30℃を超えてぐったりしている場合は、夏の休眠様の状態か熱中症のおそれがあるとされています。

夏の留守番ではエアコンを冷房または除湿で動かし続けることが前提になり、停電や故障が起きたときの影響は冬以上に早く出ると考えておきましょう。

梅雨の時期も、気温がそれほど高くない日でも湿度が上がりやすいため、冷房だけでなく除湿運転も組み合わせて、ケージのまわりが蒸れないようにしておくとよいでしょう。

お盆の時期は台風の接近や雷雨で停電が起こることもあるため、天気予報によっては預ける方法に切り替える判断も必要です。

春と秋は昼と夜の寒暖差に注意する

春と秋は過ごしやすい季節に思えますが、ハリネズミにとっては昼と夜の温度差が大きい、油断しやすい時期です。

昼間は暖かくても夜に急に冷え込む日があり、エアコンを入れずに出かけると、明け方に室温が大きく下がることもあります。

エアコンを冷房と暖房のどちらに設定すればよいか迷う時期です。

自動運転で設定温度を保つモードを使うか、ヒーターとサーモスタットを組み合わせて、下がりすぎと上がりすぎの両方に備えておくと、急な冷え込みにも対応しやすくなります。

連休の多い5月や9月は旅行の計画も立てやすい時期ですが、出発前に数日分の最高気温と最低気温の予報を確認してから、留守番にするか預けるかを決めると判断がぶれにくくなります。

旅行から帰ったあとに確認したいこと

旅行から帰ったら、荷物を片づける前に、まずハリネズミの様子とケージのまわりの状態を確かめてください。

留守番をさせた場合でも、預けていた場合でも、見るべきポイントは大きく変わりません。

体重と食べた量を確かめる

獣医学の資料では、ハリネズミの体重を週に1回測って、適正な体重を保てているかを確かめることがすすめられています(Merck Veterinary Manual)。

普段から体重を記録していれば、旅行の前後で数字を比べるだけで、留守中にしっかり食べられていたかの目安になります。

体重は1g単位で量れるキッチンスケールで量ることができ、小さな容器に入れてから容器の重さを差し引く方法なら、丸まってしまう子でも落ち着いて量れます。

留守番の場合は、フードの器に残った量と、給水ボトルや皿の水の減り具合もあわせて確認しましょう。

フードがほとんど減っていない、体重がはっきり落ちているといった変化があれば、早めに動物病院へ相談することをおすすめします。

預けていた場合は、預け先で食べた量や便の様子を聞いておくと、帰宅後の変化と比べやすくなります。

体が冷たい・動きが鈍いときの対応

帰宅したときにハリネズミが丸まったまま動かない、触ると体が冷たい、呼吸がゆっくりに見えるといった様子があれば、冬眠に似た状態に入っているおそれがあります。

このようなときは、まず部屋の温度とケージのまわりの温度を確かめ、空調が止まっていないかを見てください。

そのうえで、自己判断で急に温めたりせず、動物病院に電話で状況を伝えて指示を受けることが大切です。

体温を急に上げると体に負担がかかることがあるため、ブリーダーの解説でもドライヤーのように急激に温める方法は避けるよう注意されています。

夏に帰宅して、ケージの中が暑く、ハリネズミがぐったりしている場合も同じで、涼しい場所に移しながら、すぐに動物病院へ連絡してください。

元気を取り戻したように見えても、念のため診察を受けておくと、見た目では分からない不調に気づいてもらえることがあります。

最高温度と最低温度を記録できる温湿度計を使っていれば、留守中に室温がどこまで上下したかを後から確かめられます。

様子に変化がないように見えても一度は数字を見ておくことをおすすめします。

便と皮膚の様子を見る

環境の変化や温度の変化があったあとは、便がゆるくなったり、量が減ったりすることがあります。

帰宅した日から数日は、トイレや床材に残った便の形と量を、普段の状態と比べながら見ておきましょう。

あわせて、針の抜け方がいつもより多くないか、皮膚が赤くなっていないか、体をしきりにかいていないかといった点も確認しておくと、変化に早く気づけます。

いつもと違う様子が数日続く場合は、旅行の日程や留守中の温度の記録を持って動物病院に相談すると、診察のときに状況を正確に伝えられます。

留守番をさせた場合は、留守中にたまった便や食べこぼしを片づけ、汚れた床材を入れ替えてから、ハリネズミを落ち着ける環境に戻してあげましょう。

帰宅後しばらくは、ケージの配置や寝床をいつもどおりに戻し、夜に静かに過ごせる時間をつくって、生活のリズムが戻るのを待ってあげてください。

ハリネズミと旅行に関するよくある質問

木製のFAQの文字(ハリネズミと旅行に関するよくある質問のイメージ)

最後に、ハリネズミと旅行について飼い主さんからよく寄せられる疑問に答えていきます。

1泊なら置いていっても大丈夫?

1泊の旅行なら自宅で留守番させる飼い主さんも少なくなく、前出のアンケートでも「ご飯を多めに入れてお留守番」は「預ける」に次ぐ回答でした。

ただし、1泊であれば誰でも問題ないというわけではありません。

エアコンとサーモスタットで温度を保てる、ドライフードと給水ボトルに慣れている、停電の心配が少ないという条件がそろっていることが前提になります。

冬や夏の厳しい時期、子どものハリネズミや高齢のハリネズミ、通院中の子の場合は、1泊でも預ける方法や自宅に来てもらう方法を選んだほうがよいでしょう。

迷ったときは、出発前の数日間に温湿度計の記録をとり、夜間も24〜29℃に収まっているかを確かめてから決めると、根拠を持って判断できます。

2匹以上いるときは同じケージで預けていい?

獣医学の資料では、野生のヨツユビハリネズミは単独で暮らしており、ペットとしても通常は1匹ずつ別のケージで飼われると書かれています(Merck Veterinary Manual)。

そのため、預けるときも普段と同じく1匹ずつのケージで過ごせるかを預け先に確認してください。

預け先の都合で1つのケージにまとめられてしまうと、慣れない環境の緊張に加えて、ほかの個体との接触がストレスになることがあります。

キャリーも1匹に1つ用意し、電車を使う場合はケースごとに手回り品料金がかかる点も計画に入れておきましょう。

頭数が多い家庭では、ケージを何台も運ぶ負担を考えて、自宅に来てもらう方法を選ぶのもひとつの考え方です。

多頭飼いの家庭では、ケージごとに温湿度計を置いておくと、部屋の中の位置による温度の違いにも気づきやすくなります。

家族や友人に預けるときに気をつけることは?

ハリネズミに慣れた家族や友人に預けられるなら、費用をかけずに頼める心強い方法です。

ただし、ハリネズミを飼ったことがない人にとっては、冬に暖房を切って寝ると室温が大きく下がることや、昼間に起こさないほうがよいことは想像しにくいものです。

預けるときはケージとヒーター、サーモスタット、温湿度計を一式そろえて持って行き、預け先の部屋でも24〜29℃を保てるかを最初の晩に確かめてもらうようにしてください。

針に触れるのをこわがる人には、厚手の手袋を渡しておきましょう。

お世話は餌と水の交換、床材の汚れを取る程度にとどめ、無理に抱き上げなくてよいと伝えておくと、お互いに気持ちよく過ごせます。

海外旅行に連れて行ける?

海外への旅行にハリネズミを連れて行くのは、手続きの面でも体への負担の面でも、ハードルがとても高いと考えてください。

日本に動物を持ち込むときのルールとして、厚生労働省は「動物の輸入届出制度」を設けており、いったん海外へ持ち出したペットも、原則として日本へは持ち込めない扱いになっています。

例外として、相手国の政府機関が発行した衛生証明書をそろえ、検疫所へ届け出れば持ち込める場合がある、というのが同制度の案内です。

さらにハリネズミの場合は、ハリネズミ属(Erinaceus)の全種が外来生物法の特定外来生物に指定されていることも知っておく必要があります(環境省「特定外来生物等一覧」)。

ペットとして一般的なヨツユビハリネズミはアフリカハリネズミ属で、この指定には含まれていません。

ただし同じ一覧では、輸入の際に種類名の証明書が必要な生物としてアフリカハリネズミ属も挙げられています。

渡航先の国にも独自の持ち込みルールがあります。

事情があって連れて行くしかないときは、計画のできるだけ早い段階で、渡航先の大使館や農林水産省の動物検疫所に手続きを問い合わせておきましょう。

海外旅行の間は国内で預けるか、自宅に来てもらう方法を選ぶほうが、ハリネズミにとっても飼い主にとっても現実的です。

旅行中のお世話をペットシッターに頼むとき

ハリネズミを移動させずに旅行中のお世話を続けたいときは、ペットシッターに自宅へ来てもらう方法が候補になります。

いつものケージ、いつもの温度のまま過ごせるため、環境の変化に敏感なハリネズミとは相性のよい方法です。

夜行性に合わせて訪問の時間を相談する

ハリネズミは昼間に眠っているため、日中に訪問してもらうと、眠っているところを起こしてしまうことがあります。

一方で、餌を食べたり動き回ったりする夕方から夜の時間に来てもらえれば、食べ方や動き方を実際に見てもらえるため、体調の変化に気づいてもらいやすくなります。

旅行が3泊、4泊と長くなる場合は、訪問の回数を増やすか、途中で温湿度計の数字を写真で送ってもらうなど、離れていても部屋の状態を確かめられる方法を相談しておくと心強いでしょう。

訪問の時間帯は事業者によって対応できる範囲が異なるため、夕方以降の訪問ができるか、1日に何回来てもらうかを、旅行の日程に合わせて相談してみてください。

訪問の1回でシッターがどこまでお世話をしてくれるのかは、ペットシッターは何をする?仕事内容を徹底解説で紹介しています。

シッターに伝えておきたいハリネズミの情報

ハリネズミのお世話は家庭ごとの違いが大きいため、次のような情報を紙にまとめて、ケージのそばに置いておくと伝わりやすくなります。

  • エアコンとヒーターの設定温度、サーモスタットの位置と設定
  • 温湿度計の場所と、保ちたい温度の範囲(24〜29℃)
  • フードの種類と1回に入れる量、器の位置
  • 給水ボトルと皿の位置、水の入れ替え方
  • 床材の交換の手順と、替えの床材の置き場所
  • 回し車や布製品を使っているかどうか
  • 触ってよいか、触る場合の手袋の有無
  • 体重の記録と、普段の便の状態
  • かかりつけの動物病院の名前・連絡先・診療時間

特に温度の範囲と、体が冷たく動かないときの連絡先は、目立つところに書いておくと、万一のときにシッターが迷わずに動けます。

依頼先を選ぶときに確認したいこと

ペットシッターのなかには犬や猫を中心に扱っている事業者もあり、ハリネズミのお世話に対応しているかどうかは事業者ごとに違います。

最初の問い合わせで、ハリネズミのお世話の経験があるか、温度管理の重要性を理解しているかを確認しておきましょう。

制度の面では、飼い主から動物を預かってお世話をする事業は、動物愛護管理法の第一種動物取扱業(動物を業として扱う事業者に必要な登録)のうち「保管」にあたります。

環境省の説明でも、ペットシッターのように飼養施設を持たない形の事業も登録の対象になるとされています。

打ち合わせの段階で、登録の有無、鍵の受け渡し方法、訪問後の報告の仕方を確かめておくと、旅行中も様子を把握しやすくなります。

依頼先を見比べるときの視点はペットシッターの選び方|失敗しない8つのポイントで、料金が決まるしくみはペットシッターの料金相場|選び方と注意点を解説で詳しく解説しています。

可能であれば、依頼する前に一度自宅で打ち合わせの時間をとりましょう。

ケージの中の配置やヒーターの位置、ハリネズミの持ち方を実際に見てもらうと、紙のメモだけでは伝わりにくい部分まで共有できます。

ハリネズミのお世話に対応するシッターを探す

ペットシッタープレミアムステージには、動物の種類ごとに掲載店舗を探せるページがあり、ハリネズミは「小動物」のページにまとめられています。

各店舗の紹介で対応している動物と訪問エリアを確かめ、条件の合う店舗が見つかったら、その店舗に直接問い合わせる形になります。

夕方以降の訪問ができるか、料金や対応エリアはどうかといった条件は店舗により異なるため、問い合わせの際に確認してください。

まとめ

ハリネズミと旅行するときは、日数よりも先に、旅行中も温度を24〜29℃の範囲に保てるかどうかを考えることが判断の出発点になります。

獣医学の資料が示すとおり、ハリネズミは寒すぎても暑すぎても冬眠に似た状態に入ることがあり、飼い主が不在のあいだはその変化に誰も気づけません。

自宅で留守番させるなら、エアコンとサーモスタットで温度を保つ仕組み、ドライフードと給水ボトル・皿の用意、停電の心配が少ない時期であることがそろっているかを確かめてください。

連れて行く場合は、キャリーの中の温度を保つ工夫と、昼の移動が睡眠時間に重なることへの配慮が欠かせず、飛行機ではANAの国内線のように貨物室に預ける形になります。

冬は夜間の冷え込み、夏は暑さと湿気、春と秋は昼夜の寒暖差と、季節ごとに気をつける方向が変わる点も押さえておきましょう。

移動させずにいつもの環境で過ごさせたいときは、小動物のお世話に対応するペットシッターを探し、夕方以降の訪問ができるかを相談してみるのもひとつの方法です。

温度の見通しを立ててから旅行の計画を組めば、ハリネズミにかかる負担はぐっと小さくできます。

帰宅後に体が冷たい、動きが鈍いといった様子が見られたときは、ためらわずにかかりつけの動物病院へ相談してください。

この記事を書いた人

佐藤弘幸

Written by

佐藤弘幸

アイノス本部代表。日本最大手のペットシッターフランチャイズの最高責任者の経験を経て、
ペットシッターに関する記事執筆を担当。
自身も柴犬やキンクマと暮らした経験から、飼い主目線での情報発信を心がけています。
保有資格:ペットシッター士